FF11を4年、FF14を1年、新生FF14を2年半プレイした私がMMORPGに感じる限界は次の3点。
1.<Time to Win>時間がかかりすぎる
2.<Community collapse>コミュニティが育たない
3.<niche market>一部の人向けの遊び
以下、それぞれについて、説明していく。
一つ目の限界<Time to Win>T2W
「時間が全て、時間をかけられるものが勝利する。」
2000年1月末の東京有楽町。
東京国際フォーラム。
FF11の発表イベントに私は参加していた。
TRPGで育った私は、仲間と一緒にファイナル・ファンタジーが出来るというゲームに期待していた。
ベータテスターとして参加し、仲間と仮想世界ヴァナ・ディールを旅する日々は、新しいゲーム体験だった。
ベータテストの世界はプレイできる開放エリアが少なく、プレイヤー数も限られてており、狭いコミュニティではお互いが顔見知りだった。狭いコミュニティ、つまりはムラ社会では、プレイヤー同士は衝突を避けるために、概ね礼儀正しく行動していた。
加えて、ベータテストでのキャラクターの育成結果データは、本サービスには引き継ぎが出来ない。このことが、プレイヤー間の競争や育成への欲求を抑制していた。
よって、プレイ時間の長い先行プレイヤーも初心者に優しく、コミュニティの育成にも熱心だった。
これが、オンラインが新しいゲーム体験と錯覚させた原因だった。
本サービス突入と共に、プレイヤー数は一気に増え、遊べるエリアも増えた。プレイヤーはキャラクターを育てられる限界まで育てるまで、最大効率のプレイを続けるようになった。それは、「遊びじゃない」と揶揄されるほど苛烈なもので、ゲームを長時間を「勤務」できるプレイヤーだけが生き残れる世界であった。
「このゲームは終わりがない。どれだけ時間を捧げればいいか解らない。普通のゲームはクリアすれば終わり。こんな危険なゲームは続けれらない。現実社会でやらなきゃならない事が沢山あると思うよ」
引退したあるフレンドの女性プレイヤーが漏らした言葉。
二つ目の限界<Community collapse>
「アンカー(錨)を持たないプレイヤーは漂流する。
コミュニティで共同して取り組む、ゲーム内で一定以上の価値のあるコンテンツの不在。
こうしたコンテンツはプレイヤーをゲームに繋ぎ止めるアンカーとなる。」
2011年、FF14はゲームとして様々な不備があり、システムを一新したバージョンの開発を行うという発表があった。当時のFF14はプレイヤー人口が少なく、そこがムラ社会化していることから久しぶりにMMORPGをプレイする事にした。
2012年末、一旦サービスを停止したFF14はベータテストを経て、約9ヶ月後、「新生FF14」として再開する。
プレイヤーキャラクターの成長要素をレベルと装備に切り分け、レベル上限まで成長させた後は、一定期間で更新される装備をアップグレードしていくというシステムを取っている。
この装備を取得するためには、日々プレイを継続してポイントを稼ぐ必要があるが、一週間に獲得できるポイントを制限することで、T2Wの傾向を弱めようとしている。(※1)
正式サービス後には、やはりプレイヤー人口は爆発的に伸び、そこにはT2Wの世界に変化した。
ゲームシステムを刷新することで、MMORPGとして一定の成功を収めている新生FF14ではあるが、コミュニティ醸成には失敗しているか、あるいは熱意をもって取り組んでいるとは思えない。(※2)
コミュニティは、プレイヤー間の相互作用で育っていくというのは誤りで、コミュニティに属することの利点が担保されていてこそ、プレイヤー間の相互作用がプラスに働く時はよりプレイヤーを高揚させ、マイナスに働く時にはコミュニティの損壊を防ぐことに繋がる。
3つ目の限界<niche market>
コンテンツを最も消費するのは一部のプレイヤー。
多くのMMORPGの経営は、プレイヤーの月額課金+コンテンツ課金で成立している。
新生FF14のように月額固定料金制で、コンテンツ課金もファンアイテム的なものに限っている経営は、一般的な商慣習から考えて理想的とは言い難い。
個人の趣味に訴えかける商売では、TOP20%程度の消費が全体を下支えしていく。
身近な例として、このTOP層がいるからこそ、ソーシャルゲームはF2P(Free to Play=プレイ料金無料)を成立させることができる。
新生FF14、プロデューサーの吉田氏がしばしば、このゲームを引っ張るのは高難易度コンテンツをクリアしようとするTOPプレイヤー達だという事を口にする。ゲームのデザインもどちらかと言えば長時間のプレイを苦にしない可処分時間の長い層をターゲットにしている。
接続時間に比例して課金される従量課金制であれば、この考え方は非の打ち所が無い。
だが、定額料金制であるならユーザーのTOPをターゲットした商売は効率が悪い。なぜなら、TOP層が最もコンテンツを消費する存在でありながら、コンテンツをあまり消費しないカジュアル層と同料金だからだ。
TOP層はMMORPGの売上=プレイヤー数の増加に寄与しない。そして、TOP層を主なターゲットとしたコンテンツ作りはTOP層と(おそらく)その後に続く準TOP層のプレイを継続させることが出来ても、それ以下のカジュアル層を消耗させ、離脱させてしまう。
プレイヤー数の減少は一定で収まり、プレイ人数が減ったことで結果的にムラ社会に戻り、残ったプレイヤーの満足度は低くは無いと考えられる。
ただ、カジュアル層を取り込む視点として、成長ブースト型の追加課金制度を設けるといった、適度な課金制度の拡充は必要であろう。(※3)
<考察>
MMORPGは、概ねベータサービスから始まり、プレイヤーのコミュニティはムラ社会から発展していく。本サービス開始から数年はプレイヤー増加し、一気に都市生活者のような希薄なコミュニティが乱立するが、コアなファン層だけが残り、再びムラ社会へと回帰する。
この限定されたプレイヤー層が成熟期のゲームを支えるが、プレイヤーの実年齢に連動した現実社会での立ち位置の変化等により、徐々にこの層も減少すると考えられる。
この段階にいたって、コンテンツがチームプレイ中心から、ソロプレイ中心へと切り替わっていく。
過去のコンテンツがソロプレイに切り替わっていく時点が、そのゲームの限界点である。
この限界点を迎えたMMORPGは早晩、アップデートの停止が起こり、やがてプレイヤーの自然減を見ながらサービス終了となるのではないかと考える。
脚注(※1)新生FF14はBlizzard社のWorld of Warcraft(WoW)を参考に作られており、こういったシステム周りはオリジナルというわけではない。
(※2)他のコンテンツ開発を優先しているため、そうした効果が目に見えない要素が後回しになってしまうことは致し方ないと見ることもできる。
(※3)追加パック「紅蓮のリベレーター」あたりから、課金型の成長ブーストアイテムが販売された。ただ、現行プレイヤーと肩を並べるという物になっていない。こうした問題も「強くてニューゲーム」的なシステムで過去のコンテンツを体験できるようになり、徐々には対策されてきている。